屋久島の自然は教材じゃない|子どもが森で見つける学びと地域のつながり

屋久島の自然を「教材」にしない

世界遺産の島で保育をしていると、「屋久島の自然をどう教育に活かしているんですか?」と聞かれることがあります。正直に言えば、「活かす」という表現には少し違和感があります。自然を教材や道具として利用するのではなく、自然のなかで生活すること自体が学びだと考えているからです。

大人は「これは何の木?」「この虫は何?」と名前を教えたがります。でも子どもにとっては、名前を知ることよりも、その木の幹がどんな手触りか、その虫がどう動くかのほうがずっと大切。森の中で集めた自然物を見せ合い、「なにこれ?」「これ、パンみたい!」と盛り上がる子どもたちの発見は、大人の用意したカリキュラムからは生まれません。

森の生き物や植物を観察するあゆみの森こども園の野外活動

屋久島でしかできない体験

苔の森を歩く

屋久島の森は年間降水量4000ミリ以上という多雨環境によって、地面も岩も木の幹も苔に覆われています。この苔むした森を歩くこと自体が、他の場所では得られない体験です。足の裏から伝わる柔らかさ、空気の湿り気、光が苔に反射して生まれる緑のグラデーション。こうした感覚の記憶は、言葉にはならなくても子どものなかに確かに蓄積されていきます。

樹齢の長さを体感する

屋久杉の樹齢は長いもので数千年。数字で聞いてもピンときませんが、目の前にそびえる巨木の太さ、根の広がり方、見上げたときの高さを体で感じると、「とてもとても長い時間」というスケール感が子どもなりに伝わるようです。「このきは、おじいちゃんのおじいちゃんのずっとまえからあるの?」と聞いてきた子がいました。時間という抽象的な概念に、体験を通じて触れた瞬間です。

天候の変化を受け入れる

屋久島は「月に35日雨が降る」と言われるほど雨の多い島です。1月にはモッチョム岳が白くなり、デッキの水たまりに氷が張った朝もありました。子どもが「今朝、雪を触ったよ!」と興奮して報告してきたのを覚えています。天気が変わりやすい環境で過ごすことで、子どもたちは自然をコントロールできるものではなく、受け入れるものとして捉えるようになります。

木々の緑が美しい屋久島の照葉樹林の風景

地域とつながる学び

屋久島の自然と同じくらい大切にしているのが、地域の人との関わりです。尾之間の人口は約680人の小さな集落ですが、集落の人たちが園の活動を支えてくれています。

園庭のアコウの大枝が強風で折れたとき、地域の池田造園建設さんがクレーン車で安全に撤去してくれました。折れた枝は「そらのあお」さんにお渡しして、藍染めで使うハンカチをアコウの木で染めてもらうことになりました。一つの出来事が人と人をつなぎ、子どもたちの新しい体験に広がっていく。こうした循環は、小さなコミュニティだからこそ生まれます。

子どもプロジェクトのポスターを、つき組・ほし組の子どもたちがパン屋ペイタとAコープの2か所に自分たちで歩いて届けに行きました。横断歩道では手を上げて渡り、お店では「よろしくおねがいします」と自分たちで伝える。世界遺産の自然だけでなく、その自然とともに暮らす人々との関わりが、子どもたちの学びの幅を広げています。

この島で育った子どもたちのこれから

屋久島で幼児期を過ごした子どもたちが、将来どんな大人になるのか。それはまだわかりません。島を出て都会で暮らす子もいるでしょうし、島に残る子もいるかもしれません。どちらでもいいと思っています。

ただ、世界遺産の自然に囲まれて育った体験は、その子の奥底にずっと残り続けるはずです。苔の感触、森の匂い、集落の人たちの温かさ。そういった原風景を持っていることは、どこで暮らしても、その人を支える力になると私は考えています。


屋久島の保育を体験してみませんか

あゆみの森こども園は、屋久島の自然と地域のなかで子どもたちが育つ幼保連携型認定こども園です。見学は随時受け付けています。

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